コラム:パチンコ店経営を考えるポイント

多店舗展開の留意点(3)

GOING CONCERN.(ゴーイング・コンサーン)

つまり、企業は永遠に事業を継続することが前提で活動が行われます。むろんパチンコ店は、装置産業として多大な設備投資の上に営業が行われていますから、永続的に事業が続くことを前提としているはずです。

企業活動が継続していくことを考える場合、それは経理的な面や営業的な面を想定します。そして、それは間違いではありません。ただ、ここで大きな点を見落としがちです。

それは、そこで働く人達のこと・・・

企業が継続し続けるということは、つまりその企業で働く人達がずっと存在するということです。働く人がいなければ、企業など存続しません。当たり前のことです。

と言うことはつまり、

「企業が円滑に継続していくということ」 = 「そこで働く人達も円滑に活動できるということ」

に他なりません。組織が継続するためには、そこで働く人々の状況にも、目を向けなければいけません。

 

企業は多店舗展開をしていけば、従業員の数は増えていきます。そして、 それに伴って役職というポストが増え続けます。1店舗増えれば、その店に必要な店長や主任などの役職がその分増えるわけですから、当然です。

「ポストがたくさんある」ということは、そこで働く人達にとってどういう状況でしょうか?

それは、希望に満ち溢れた世界です。頑張って実力をつけたら、増え続ける役職者の椅子に自分も座ることができるんですから。誰もが上を目指しながら、活発に働ける環境にあります。

多店舗展開している会社というのは多分にして、常に従業員がチャレンジ精神にあふれ、活き活きと働いているものです。決して珍しいお話では、ありません。

ところが・・・

多店舗展開している企業であっても、いつかその店舗数は止まります。出店ペースが鈍り、そしていつしか止まる、もしくは減っていくことになります。永遠と店舗が増え続けるなんて、物理的にありえませんから。

さて、ではそうなると、そこで働く人達はどうなるでしょう?

上を目指そうにも、そのポストの空きがありません。後から入社してきた人達は、上が支えていて、なかなか役職にありつけなくなります。

ここで、組織的に大きな矛盾がはらんできます。

まだポストに空きがあったころの上司たちは、そのモチベーションのまま部下にも意欲的な活動を望みます。

「ほら、頑張れば俺の様に、たった1年で主任にだってなれるんだぞ、この会社は」

なんて具合に。でも、そんな主任のポストはその主任が昇進しない限りは空きができません。上司にどんなに背中を押されたところで、部下はその現実に気がついています。

そしてその主任だっていずれ、自分がさらに上に昇進するためのポストには空きがないことに気がつきます。希望にあふれ一生懸命やれば報われた日々が、いつか遠く過去のものとなっていくわけです。

そして、組織に硬直化が起こります。

「やれば、出来る!」
「当社は、実力主義!」

そういくら唱えたところで、人事は流動化せず停滞したままになっているわけです。以前と同様の意気込みで叫び続けるスローガンは、そこで働く人たちにとっては意味のない重圧にしか感じられません。

組織の現場は、モチベーションの低さと無意味なプレッシャーで埋め尽くされていきます・・・

水は流れている間は腐りませんが、そこに留まり続けていればいずれ腐り始めます。それと同様に、組織も硬直化し、腐敗しはじめます。

上司の目だけを誤魔化すことに専念し、仕事の質が低下していきます。接客サービスの低下、いい加減な釘調整、帳尻あわせの日計表、従業員同士の内輪揉め、上下関係の不和、そしてモチベーションの冷め切った現場の管理職たちによる不正行為・・・

これらは極端な例に思う方もいるかもしれません。しかし、決して珍しい例ではなく、多店舗展開しているしていないに関わらず、硬直化した組織には当たり前のように存在する事実です。

 

さて、3回に渡って多店舗展開における留意点をお話してきました。

営業上、経理上、そして人材管理上・・・

いずれにせよ、多店舗展開において注意しなければいけないのは、その着地点です。店舗数の増加が止まったその先のことを考えて事業を拡大していかなければ、いずれも成功とは程遠い状況に追い込まれてしまいます。

短期的視野に囚われてはいけません。物事が上手くいっている今だけに目を奪われてはいけません。

その先の、ずっと先を考えながら常に経営を行っていく視野の広さが必要です。

GOING CONCERN.

私たちに必要なのは目先の利益ではなく、ずっとずっと企業を存続させること。それこそが、成功へと続く道のはずです。

2008年1月14日

 

追記

長い間このコラムをお休みしていた上に大変申し上げにくいのですが、今回を持ちましてコラムのコーナーは休止させていただきます。

このコラムをご覧の皆様方からは、「タメになった!」「目から鱗が落ちた!」「頑張ってください」などの声援を多数いただいておりました。しかし、私の業務上また体調の都合などによりなかなか更新できないことが現実にあり、また今後も定期的な更新が見込めないのが現状です。

そのため、大変心苦しくはありますが、その様な事情を踏まえ、このコラムは今回を持ちまして休止とさせていただくことにしました。再開は、未定です。

多くの方々による大変なご声援、本当にありがとうございました。

なお、私が執筆するコラム・エッセイ等は「裸足のリーダー」及び「転がる水平線」等にて継続してご覧いただけます。ご希望の方は、メルマガにご登録していただけると幸いです。

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また、今後はいくつかの活動を展開させていくつもりでいます。 今後とも、より一層のご声援、宜しくお願いします。ありがとうございました。

2008年1月14日

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