コラム:パチンコ店経営を考えるポイント

集客(2)

集客(積極的な集客)そのものは、単にお客様をお店に集めるだけの行為にしか過ぎません。重要なのは、「何のために集客を行なうのか」というその目的です。

では、あなたのお店では、何のために集客を行なっているのでしょうか?

多くのパチンコ店では、「集客=売上げの増加」として考えて、集客そのものが目的になっている場合が、非常に多いように思えます。

しかし、集客の目的を即売上の増加に結び付けて考えるのは間違いです。最終的に売上げを上げることが目的であっても、それはあくまで間接的な目標であり、直接的な目的ではありません。

確かに、イベントなどの集客によってより多くのお客様がお店に集まってくれば、集まったお客様の分だけ自動的に売上げは上がります。けれどもそれは、あくまで一時的な効果ですから、時間の経過とともに自動的に売上げも元に戻ります。

ですから、再びイベントを行ないます。そしてまた、お客様はいなくなります。結局はそれがいつまでも繰り返される事になるわけです。

ところが、その様な行為に慣れてしまうのは、他でもない「お客様」です。

慣れてしまったお客様の反応は、次第に鈍くなっていきます。ましてやライバル店も同じく集客を行なっています。顧客の反応率が低くなっていくのは、当然のことです。

もちろん、出玉を出し続ければ、お客様の反応は鈍くはならないでしょう。しかし、お店にはそれぞれの事情があります。常に出玉を出し続けられるとは限りません。

上手く集客できなくなれば、今度は何か良い企画はないものだろうかと頭を捻り出します。しかし、その様な繰り返しを行なっていく中で、めぼしい企画はどんどんと出尽くしていきます。お客様に対してインパクトのあるイベントは、ある程度規模を大きくしないと効果が期待できなくなってきます。

そしてしばらくすれば、そのイベントにもお客様は慣れてしまいます。繰り返されるイベントは、どんどん集客力を失っていきます。知らないうちに、集客のために費やした経費ばかりが計上され、収益を圧迫する原因のひとつとなっていきます。

短期的に見ると集客は直接売上げそのものに効果があるように思えますし、またそれは事実です。しかし長期的に見た場合、この様な発想で集客を行なうことが、結果として集客できない状況に追い込んでいるということがおわかりだと思います。

このような状態を私は、「集客手段を失っている」と言っています。この様なパターンは、集客のための活動をやればやるほど、結果として集客する手段を失っていっているのです。

では、集客の目的は一体なんでしょうか?

ここで思い出して欲しいことがあります。先程私は、「集客の目的は売上げを上げることではない」と言いました。これを別の言い方にすると、「売上げを上げるための要因は、集客ではない」ということになります。

さて、気がついていただけたでしょうか?

そう、売上げアップの要因は、集客ではありませんでした。既にテキストで説明したとおり、売上げアップの3つの要因は、

(1)新規顧客の獲得
(2)既存客の来店頻度の増加
(3)来店客の滞在時間の増加

でしたね。(覚えてますよね?)

そしてこの(1)と(2)が積極的な集客の目的に当たり、(3)が消極的な集客の目的となります。

積極的な集客の目的とは、直接的に売上げを増加させるためのものではなく、新規顧客を獲得することと既存客の来店頻度を増加させることです。そしてその目的の達成が、最終的に売上げの増加に結びついていくわけです。

この違い、わかりますか?

集客することで自動的に増加する売上げを見込んでイベントなどを続けていても、売上げのベースとなる部分(平常営業時の売上げ)が増加するわけではありません。あくまで一時的な売上げの上昇です。ですからこのような発想で売上げを恒常的に保つには、集客活動を頻繁に続けていく必要があるのですが、お客様の反応率は徐々に落ちていきます。最終的に恒常的に保たれるのは集客費用だけであり、その費用分の集客効果は売上げに対してなくなっていくのです。

それに対し、集客の目的を新規顧客の獲得と既存客の来店頻度の増加に置くというのは、ベースとなる部分の売上げの増加を最終的に狙っているということです。つまり、積極的な集客をお店側が行なわなくとも、日常的に来店してもらえるお客様を増やすということです。そのために集客が行なわれなければならないのです。

集客とは、新規顧客の獲得と既存客の来店頻度の増加のために行なわれます。

新規顧客の獲得とは、見込み客を利用客へと格上げしていく作業です。既存客の来店頻度の増加とは、利用客を固定客へと近づけるためのプロセスです。

結局のところ、お客様を集めて終わりではいけないのです。お客様を集めたら、その後どうするか?ということが最も大切なのです。

さて、ここでももうひとつ思い出しましょう。集客とはどのお客様を区別して集客するのでしたっけ?(前回のコラムで説明しましたよね。)

そう、

(1)見込み客を集める
(2)利用客を集める
(3)衝動来店を誘発する

の3つでした。

集客を考える際に、お客様の種類にわけて考えるということは、つまり

(1)見込み客を集めて、新規顧客の獲得を狙う
(2)利用客を集めて、既存客の来店頻度の増加を狙う

ということになるわけですね。(衝動来店については少し複雑になるので、ここでは省略します。)

店舗営業において営業を考える際、必要なのは

「どのお客様を集めるのか?そして集めた客様をその後どうするのか?」

ということです。

この一連の流れをしっかりと理解してホール営業を行なうことが、効率的な営業を生み出す結果となっていくのです。

ホール営業とは実は、全ての物事が一定の仕組みによって回りだすからくり人形の様なものです。そして、ホール営業を行なう側はそのからくりを知り、そのからくりを利用していくことが必要なのです。

しかし、現在のパチンコ・スロット店でこの様なことを考慮して営業を組み立てている店は、まだまだ少ないように思えます。

先に示した例の様に、集客を短絡的に捉え集客を浴びせるように繰り返す営業が功を成すのは、市場が成長期にある時の話です。時代はとっくに変わりました。今の時代でこの様な営業を行なって効果があるのは、実はその地域1番店である店舗のような、ごく一握りの店舗だけなんです。つまり市場シェアを最も多く占有しているパチンコ店だけが、通用する理屈です。

ところが、多くのパチンコ店ではこのホール営業の仕組みを意識せずに、競争力の強いライバル店の営業方法につられてしまっているように感じます。

ライバル店が最も得意とする営業方法で、こちらの店も戦おうとするから、お店の経営状況は疲弊していくのです。私には、なぜ相手の土俵で戦おうとする店が多いのか不思議でなりません。

物事の表面的なことばかりに囚われている、思考停止型の発想はもう止めにしましょう。ホール営業の仕組みを知り、あなたの思考を稼動させ、今以上に効率的・効果的な営業を組み立てていく、思考稼動型の発想に切り替えていきましょう。

2004年7月13日

ホール運営研究会
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