コラム:パチンコ店経営を考えるポイント

新店さんいらっしゃい(1)

とある駅の周辺では、ここ1年の間に大型パチンコ店の出店が2店舗もありました。それまでもその地域には、多数のパチンコ・スロット店が存在していたのですが、その新店舗の出現により一気に競争が激しくなった様子です。

ところで、市場が成長期にある場合と成熟期にある場合とでは、自ずと「出店」というものの持つ意味合いが違ってきます。

仮にA社がAという店を新たに出店する事を考えてみましょう。

市場が成長期にあるということは、市場が拡大しているということです。この時期の新規出店は、市場の拡大に乗る形になりますから、顧客獲得が容易になります。ですからA社がA店を出店しても、市場が大きくなる分だけA店は収益を確保することが容易になるわけです。また出店先地域の競合店からしても、新たにA店というライバルが増えても、市場シェアが拡大している分、経営的打撃は吸収されることになります。

ところが市場が成熟期を迎えると、市場は拡大しなくなります。この時期にA社が新たに出店する場合、出店先地域の競合店の顧客を奪うことでしか、A店の経営は成立しない事になります。その地域の既存店にとってA店の開店は大きな打撃となり、互いにシェアの奪い合いが起こるため、競争が激化することになります。

パチンコ業界も市場は現在成熟期を迎えていますから、以前と現在とでは出店計画そのもの性質が違ってきます。

進出する地域の状況や進出を行なう企業の考え方にもよりますが、基本的にこの時期での出店は、その地域における「一番店」となることを前提に計画が立てられます。地域一番店とは読んで字のごとく、その地域のパチンコ店の中で最も繁盛しているお店のことです。

なぜ地域一番店となることを前提とした出店計画が必要になるかといえば、単純に採算が合うかどうかでの出店計画では競合店との競争に負けてしまう可能性があるからです。その地域で強いお店とそうでないお店の収益性は大きな差を生みますので、競争の激しくなった地域において将来その店舗が生き残るかどうかは、出店後のポジションに左右されてしまいます。出店した段階で地域一番店になる事によって、その地域での競争力を確保し、リスクを最小限に抑えるというわけです。

つまり市場が拡大しない時期での出店計画は、競争力が非常に重要視されるわけですね。

そこで出店する側の企業では、実際にその新店舗が開店するまでの間、その地域での競争上の優位性を確保できるように準備することになります。その優位性とはスケールメリットであったり、機種構成、立地環境、準備資金や営業計画性等であったりするわけですが、いずれにせよ競争上優位に立てる要因をいくつも取り揃えた状態で開店します。逆に言ってしまえば、一番店となれる要因があまり確保できない地域での出店は控えることでしょう。

要するに新規出店は、新店舗自身が何らかの失策を行なわない限り、既存店がどの様な手段を講じようと、結果として1番店になるという計算のもとで行なわれる、というのがベストな形になります。(ただしこれは絶対ではありません。企業の考え方にもよりますし、上記の事に思いを馳せずに出店してしまう企業もあるでしょうし、また計画通りに物事が進むかどうかも、それは企業の力量によります。)

ですから、市場成熟期に出店されてしまった地域の既存競合店は、大きな打撃を受けることを覚悟しなければなりません。何らかの対策を取る事で、この新店舗の登場を迎え撃つことが必要になります。

ところがどうでしょう・・・・

冒頭でお話した地域では、あまりその様な対策をしているとは感じられないのです。

新しいライバル店が開店する直前まで、その地域の既存店は、まるで決戦前夜であるかのように静かな営業だったといえるでしょう。

そして新規ライバル店が開店するやいなや、負けじとばかりに新機種導入やイベント、出玉競争が繰り返されます。それでも効果が薄ければ、店舗をリニューアルして対抗します。

正直言って、私は疑問に思うのです。どうして新規ライバル店を迎え撃つ側は、市場が停滞した今でも、市場拡大期と変わらぬ対抗手段を行なうのだろうか?・・・と。

(続く)

2004年6月4日

ホール運営研究会
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