コラム:パチンコ店経営を考えるポイント

マーケティングの変化(1)

前回・前々回に渡って顧客特性について触れたわけですが、あまり部分的なお話ばかりすると基本的な視点がずれてしまう可能性もあります。ですからここで一度パチンコ業界の話から離れ、マーケティングが時代の流れの中でどの様に変化しているか、その概要を見ていきましょう。

1970年代までの日本経済は高度成長期にあり、物のない時代から物を獲得する時代へと変化していきました。

「私の家にもテレビが欲しい」
「冷蔵庫が欲しい」
「車が欲しい」
「次はカラーテレビが欲しい」

市場はどんどんと拡大し、物を作れば売れる時代でした。

自分の会社の市場シェアが変わらなくとも、市場そのものが拡大していったので、自社の売上げもそのまま増加するというのがこの時代の特徴です。100億円の市場の10%のシェアを持つ会社の売上げは10億円になりますが、市場が200億円に拡大すれば、同じ10%のシェアを確保するだけで20億円に売上げが倍増しますね。そういう時代です。

この時代に必要な企業の力とは、生産力とそれを販売する場の確保でした。

ところがテレビも車も一家に1台が実現し、必要なものには不自由しない時代が来ると状況は変わってきます。

必要なものはみんなが持っているという時代ですから、市場は拡大しません。市場規模が拡大しなければ、各会社とも売上げを上げるために他社のシェアを奪って、自分達のシェアを拡大しなければならなくなります。つまり顧客の奪い合いという事になりますね。

ある意味、本格的な企業間競争のはじまりです。

そしてこの時代には、消費者が商品を選択する権利を手にすることになります。単に消費者は物を獲得するだけはでなく、どの様な物が欲しいか「選択する」という消費行動に変化しました。

この様な時代になると、単に物を売ろうとしても簡単には売れなくなります。以前とは違い、企業は自分の会社の商品を、または自分の会社が経営するお店を、消費者に「選んでもらう」必要性が出てきたからです。

しかも人はそれぞれ好みや性質が違いますから、その選択の結果も人それぞれになります。白いシャツが好きな人は白いシャツを買いますし、黒が好きな人は黒い色のものを買う傾向が強くなります。速くて格好の良いスポーツタイプの車を求める人もいれば、燃費を最優先に考えて車を購入する人もいます。つまりニーズが多様化していくということですね。

そこで企業は自分達の商品を選んでもらうために、どのような人がどのような物を欲しがるのか、 自分の会社の顧客がどの様な特性を持った人たちで、どの様にすれば満足してくれるのかを知る必要が出てきました。

そしてその結果、企業は多様化したニーズに対応するため、あらかじめ顧客層を絞り込み、その顧客の特性に合わせた商品開発を行なうようになります。そしてこれらの商品の販売活動も、商品のコンセプトに合わせ、それぞれ狙いを定めた顧客層(ターゲット)が最も反応する方法を用いる事になるのです。

車を例にとるとわかりやすいかもしれません。最近で言えば、ダイハツのTantoのCMは非常に明解です。女性が憧れる男性タレントを夫に持ち、既に2児の母親であるにもかかわらずサーフィンなどもこなす活動的な女性タレント工藤静香を起用しています。そしてCMの中では母親と子供の触れ合いが描かれています。

これだけでこの車は誰に向かって売ろうとしているのかがハッキリとわかりますね。30代の女性で子供を連れて外出する機会の多い人がターゲットになります。(実際のコンセプトはさらに細かく明確にターゲットが設定されています。興味のある方は調べてみるのも面白いですよ。)

さらにこのCMではダメ押しとして、バックに流れる曲に松田聖子の「SWEET MEMORIES」のカバーが起用されています。この曲は、80年代に一世を風靡したサントリーのペンギンCMで流れていた曲です。若き思い出の日々をこの時期に過ごした女性なら、CMから流れるこの曲を聴いただけで、思わずテレビに振り向くことでしょう。

「あれー?この曲、昔流行ったペンギンのCMで流れてたやつじゃない?懐かしーい!あれ?でもこれ、歌ってるの松田聖子じゃないよね。誰?工藤静香が歌ってるの?へー!」

CMひとつでターゲットの関心をここまで引っ張れます。これでこの車のターゲットとなる彼女達の頭に、このCMがインプットされるわけですね。

この様に企業はいろいろな手段を用いてターゲットを魅了する販売促進活動を行なっています。そして、 このようなマーケティングをターゲット・マーケティングと言います。市場を細分化してターゲットを絞り、そこに向けてどの様に販売するかに力が注がれます。そしてそれによって自社のシェア拡大を狙うのです。

(続く)

2004年5月10日

ホール運営研究会
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